苦境に立つ先発医薬品企業のジェネリックに対する対抗戦略

 
ジェネリックへの対抗戦略
この記事を書いている人 - WRITER -
原崎 (HARASAKI)
1985年生まれで医学・薬学・性・Webの知識を高める為に日々勉強。
自分の経験・知識で、悩みのある人を元気に、安心を与えられればと、その気持ちを原動力に医学を学んだ結果、婚期を逃し今に至ります。

視力:0.1
好きな眼鏡の色:黒
口癖:ちくしょうっ・・・

医薬品産業の特徴として、ハイリスク・ハイリターンな研究開発とジェネリック医薬品の存在を挙げることができ、近年のジェネリック医薬品の普及は先発医薬品企業の経営戦略に大きな影響を与えています。

そこで今回の記事では、ジェネリック医薬品への対抗戦略を解説するための背景として、医薬品の研究開発の概要、ジェネリック医薬品の現状、ジェネリック医薬品が先発医薬品の売上に与える影響などについて説明します。

新医薬品とジェネリック医薬品

新医薬品とジェネリック医薬品

新しく開発された有効成分を含有する医薬品は一般的に新薬と呼ばれています。

しかし、市場にて販売されている医薬品の中には、先に販売が開始された他の医薬品と有効成分は同じで、その剤形や投与の対象となる疾患が異なる医薬品もあり、こうした医薬品も新薬と呼ばれる場合があります。

そのため、新薬という用語が意味するところは、必ずしも明確とはいえません。

ジェネリック対抗戦略について解説するには、こうした点を明確にして説明する必要があるため、本記事では、新薬という用語は用いず、新医薬品、新有効成分含有医薬品、改良医薬品、ジェネリック医薬品という用語を用います。

医薬品


新医薬品

・新有効成分含有医薬品

改良医薬品

・新医療用配合剤

・新投与経路医薬品

・新効能医薬品

・新剤形医薬品

・新要領医薬品など

ジェネリック医薬品

既に販売されている医薬品と同一の有効成分を同一量含有し、効能・効果、用法・用量が原則的に既存販売されている医薬品と同じ医薬品

新医薬品とは

日本において医薬品の製造販売を行おうとする場合には、品目ごとに、厚生労働大臣の承認(薬事承認)を受ける必要があります。

薬事承認を受けるための申請を行う際の申請区分を示します。

これらの申請区分の中で、新医薬品とは、「主に、新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤、新投与経路医薬品、新効能医薬品、新剤型医薬品、新用量医薬品など」とされています。

※独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイト

http://www.pmda.go.jp

例えば、すでに有効成分Aを含有し胃がんに対する効能・効果を有する医薬品が販売されていたとして、同じ有効成分Aを含有し十二指腸がんに対する効能・効果を有する医薬品を開発した場合、それは新効能医薬品に該当し、新医薬品といえます。

また、同じ有効成分Aを含有し胃がんに対する効能・効果を有するものであったとしても、すでに販売されている医薬品に比べて徐放化された医薬品(例えば、従来は1日3回投与する必要があったものを、徐放化により1日1回の投与とした医薬品)であれば、それは新剤形医薬品であり、これも新医薬品に含まれます。

つまり、新医薬品は、新規な有効成分を含有する医薬品(新有効成分含有医薬品)のみを意味しているのではなく、すでに販売されている医薬品と同じ有効成分を有するものであっても、その投与経路、効能・効果、剤形、用量などが異なる場合は、新医薬品と区分されます。

※『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』(薬機法)によると、新医薬品は、「既に承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品として厚生労働大臣がその承認の際指示したもの」と定められています。

改良医薬品とは

本記事において、改良医薬品は、新有効成分含有医薬品以外の新医薬品を意味しています。

具体的には、新医療用配合剤、新投与経路医薬品、新効能医薬品、新剤形医薬品、新用量医薬品などのことであり、すでに販売されている医薬品と有効成分は同じであるものの、その効能・効果や剤形、用量などが異なる医薬品のことです。

ジェネリック医薬品とは

ジェネリック医薬品とは、すでに販売されている医薬品と同一の有効成分を同一量含有し、効能・効果、用法・用量が原則的にそのすでに販売されている医薬品と同じ医薬品のことを示しています。

新医薬品とジェネリック医薬品には、研究開発費、研究開発期間、薬価などに大きな違いがありますが、そうした違いについては、後ほど詳しく述べます。

リスクの大きい医薬品の研究開発

リスクの大きい医薬品の研究開発

成功率30,000分の1

人体に対して重篤な副作用を有する医薬品や、有効な治療効果が期待できない医薬品が市場に出回ることが望ましくないことはいうまでもありません。

そのため、日本において医薬品の製造販売を行おうとする場合には、品目ごとに、厚生労働大臣の承認(薬事承認)を受ける必要があります。

薬事承認を受けるためには、薬事承認審査において、その医薬品の有効性、安全性などが確認される必要があります。

しかし、新たに開発された医薬品が有効であるか、安全であるかということを、研究室で実施できる試験のみで明らかにすることは難しいため、薬事承認の申請を行う際には、ヒトを対象として実施した試験(臨床試験)で得たデータを提出する必要があります。

このように、医薬品の研究開発においては、最終的に薬事承認の取得を行う必要があり、そのプロセスを大きく分けると「基礎研究」、「非臨床試験」、「臨床試験」、「薬事承認審査」の4つに分けることができます。

新規な有効成分を含有する医薬品の研究開発の場合、基礎研究には、およそ2~3年、非臨床試験にはおよそ3~5年、臨床試験にはおよそ3~7年、薬事承認審査にはおよそ1~2年が必要といわれております。

これらの期間を合計すると、基礎研究に着手してから薬事承認を取得するまで、9~17年という非常に長い研究開発期間が必要となることがわかります。

※薬事承認を得るために必要なデータを集めるための臨床試験のことを「治験」といいます。

医薬品の研究開発のプロセスは以下の記事で詳しく説明しております。

高騰する研究開発費

長期間を要し、かつ、成功率が低い医薬品の研究開発ですが、そのために必要な研究開発費はどの程度なのでしょうか。

1つの新薬の開発には、300~1,000億円の研究開発費が必要といわれています。

また、文献に示された研究によると、1990~1998年度に日本で臨床試験を開始した714の研究プロジェクトでは、1新薬当たりの研究開発費は413億円でした。

このように、医薬品の研究開発には多額の費用が必要となりますが、これは、前述のとおり、医薬品の研究開発には長期間を要することと、開発が途中で断念された候補化合物に対しても、すでに研究開発費が投下されていることが原因と考えられます。

医薬品の研究開発費は他産業と比べて高額といえます。

他産業と比較するために、売上に占める研究費の割合(研究費対売上高比率)を以下のグラフに示します。

医薬品研究費の比較グラフ

医薬品製造業における研究費対売上高比率は、2014年においては12.21%でした。

この割合は全産業平均の3.28%の4倍近くあり、製造業の平均である4.11%の約3倍もあります。

この結果は、医薬品産業においては、他産業に比べて、積極的な研究開発投資が行われていることを示しています。

日本の産業別研究費の対売上高比率

日本の産業別研究費の対売上高比率

そして、医薬品の研究開発費は、急激な高騰を続けています。

文献で報告された研究によると、1970~1982年に米国で臨床試験が開始された新薬については、1つの新有効成分含有医薬品当たりの研究開発費は3億3500万ドルであったにもかかわらず、1983~1994年に米国で臨床試験が開始された新薬については、その研究開発費は8億200万ドルにまで増加しています。

他にも、報告された調査では、1つの新有効成分含有医薬品を開発するための費用は、1950年代から、年率13.4%で指数関数的に増加していることが示されました。

1980年代前半には200億円程度であった1つの新有効成分含有医薬品の研究開発費が、2010年頃には、1,500億円程度に高騰したのです。

こうした研究開発費の高騰の背景には、新たな有効成分を発見することが難しくなっていることや、いっそうの安全性の確保のため、以前に比べてより多くの人を対象とした臨床試験が実施されていることがあるといわれています。

改良医薬品の開発による価値向上とリスクの低下

このように、医薬品の研究開発は、高額な研究開発投資と長い研究開発期間が必要で、そのうえ成功率は低いという、非常にリスクの大きなものといえます。

しかし、こうした特徴は、新規な有効成分を含有する医薬品の研究開発が備えるものであり、改良医薬品の研究開発となると状況は異なります。

先発医薬品企業の研究開発は、新有効成分含有医薬品の薬事承認を取得したところで終わるわけではなく、さらに研究開発を進めることで、新効能医薬品、新剤形医薬品、新用量医薬品といった改良医薬品の薬事承認を取得することが少なくありません。

降圧薬として開発が始まったものが、臨床試験において他の疾患に有効であることが偶然判明するというような例も知られています。

そのような研究開発の途中で予想外にみつかった効能・効果に基づいて、新効能医薬品の開発が進むこともあります。

また、医薬品の製品化に際しては、その効能・効果に適した製剤に関する研究も行われており、最初に製品化した剤形よりも治療効果の高い剤形の医薬品を開発し、新剤形医薬品として後に販売を開始するということもあります。

そうした改良医薬品は、最初に販売を開始した新有効成分含有医薬品よりも患者や医療現場のニーズに合致していることも多く、高い売上を達成することもあります。

つまり、こうした改良医薬品の研究開発は、ある有効成分を含有する製品群全体の製品価値を高めることで、売上の増加につなげることができるため、先発医薬品企業にとって重要な研究開発戦略の1つといえます。

この記事を書いている人 - WRITER -
原崎 (HARASAKI)
1985年生まれで医学・薬学・性・Webの知識を高める為に日々勉強。
自分の経験・知識で、悩みのある人を元気に、安心を与えられればと、その気持ちを原動力に医学を学んだ結果、婚期を逃し今に至ります。

視力:0.1
好きな眼鏡の色:黒
口癖:ちくしょうっ・・・

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Copyright© お薬メール , 2018 All Rights Reserved.