ジェネリック医薬品の参入を阻む壁

 
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原崎 (HARASAKI)
1985年生まれで医学・薬学・性・Webの知識を高める為に日々勉強。
自分の経験・知識で、悩みのある人を元気に、安心を与えられればと、その気持ちを原動力に医学を学んだ結果、婚期を逃し今に至ります。

視力:0.1
好きな眼鏡の色:黒
口癖:ちくしょうっ・・・

巨額の研究開発投資を行うことで開発に成功したブロックバスター。

先発医薬品企業としては、このブロックバスターの販売により、それまでに投じた研究開発費を回収し、次なる研究開発のための資金を確保しなければなりません。

しかし、いかにブロックバスターであったとしても、ジェネリック医薬品の参入により売上が急落してしまうと、十分な利益を得ることができなくなってしまいます。

そのため、先発医薬品企業にとっては、ジェネリック医薬品の参入を阻止することが非常に重要な課題といえるのです。

ジェネリック医薬品の参入を阻止するために利用できる制度としては、特許制度と新医薬品の再審査制度を挙げることができ、この両者はジェネリック医薬品に対して独立して参入障壁として機能し得るものです。

しかし、医薬品ライフサイクルマネジメントの観点からみた場合、両者は連動してジェネリック医薬品の参入を阻止しているといえます。

本記事では、医薬品ライフサイクルマネジメントと特許制度、新医薬品の再審査制度について、特許権の存続期間の延長登録制度(「特許期間の延長制度」ということがあります)も含めて説明します。

医薬品ライフサイクルマネジメントの6つの手法

医薬品ライフサイクルマネジメント

プロダクト・ライフサイクル・マネジメントとは、「製品に関する最初のアイデアが生まれたときから、その製品が市場から消えるまでの間に、その製品に対して行うマネジメント」です。

個々の製品に対するマネジメントのみならず、プロダクト・ポートフォリオ全体、すなわち、ある特定の製品群に対するマネジメントも包含する概念とされています。

また、その目的は、現在あるいは将来の製品の価値を向上させ、売上を増大させるとともに、製造販売などに要するコストを最小化することで、収益を最大化することとされています。

こうしたプロダクト・ライフサイクル・マネジメントは幅広い産業において実施されていますが、実施すべき事項やその優先順位については、産業分野ごとに異なっています。

プロダクト・ライフサイクル・マネジメント

医薬品に対するプロダクト・ライフサイクル・マネジメントは、医薬品ライフサイクルマネジメントと呼ばれています。

医薬品ライフサイクルマネジメントは、研究開発に着手したときから、その医薬品の製造販売を終了するまでの間に、その医薬品に対して実施されるマネジメントであり、医薬品開発への投資から得られる収益を最大化することを目的としています。

その主な手法としては、ブランディング(Branding)、プロダクト・サポート(Product support)、トレード・リレーションシップ(Trade relationships)、マニュファクチュアリング・コスト・アドバンテージ(Manufacturing cost advantage)、プロダクト・インプルーブメント(Product improvements)、プロダクト・ライン・エクステンション(Product line extensions)が知られています。

医薬品ライフサイクルマネジメントの主な手法

手法概要
ブランディング企業ブランドや商品ブランドに対する信用を高める。
優れた治療効果を有し、安全な医薬品を提供する事が重要
プロダクト・サポート付随サービスや情報の提供により、医療従事者と強固な関係を築く
トレード・リレーションシップ先発医薬品企業は、自社が販売する製品に関して、有効性や安全性に関する豊富な情報を保有
マニュファクチュアリング・コスト・アドバンテージ
医薬品の製造コストを下げ収益性を改善
プロダクト・インプルーブメント改良医薬品の上市により製品群全体としての付加価値を向上
プロダクト・ライン・エクステンション同上

ブランディングの詳細

ブランディングとは、医師や薬剤師などの医療従事者や患者に対して、企業ブランドや商品ブランドに対する信用を高めることで、市場における優位性を確保する手法のことです。

長年にわたり医薬品を提供し続けている老舗の先発医薬品企業に対する信用は大きく、ジェネリック医薬品メーカーに比べて大きな優位性を備えているといえます。

医薬品企業が企業ブランドに対する信用を高めるには、継続的な努力が必要です。

信用を高めるためには、優れた治療効果を有し、かつ、安全な医薬品を長年にわたり提供し続けることが求められるからです。

その一方、何か問題が起きた際の対応を誤ると、企業ブランドに対する信用は瞬く間に失墜してしまいます。特に医薬品は患者の生命に直接的にかかわるものですから、その企業の製造する医薬品の安全性に疑問を生じさせるような問題が発生してしまえば、企業ブランドに与えるダメージは計りしれません。

プロダクト・サポートとトレード・リレーションシップの詳細

製品に付随するサービスや情報の提供により、医師や薬剤師などの医療従事者と強固な関係を築くことで、医薬品の売上を伸ばす手法のことをいいます。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品に比べ簡略なデータで薬事承認を取得することができます。

つまり、先発医薬品企業よりも少ない研究開発費で医薬品を開発できる点にジェネリック医薬品企業の強みがあります。

しかし、逆にいえば、これはジェネリック医薬品企業が保有している臨床試験・非臨床試験・基礎研究に関するデータは、先発医薬品企業が保有しているデータよりも少ないことを意味しています。

先発医薬品企業は、自社が販売する製品に関して、有効性や安全性に関する情報も含めて臨床試験や非臨床試験から得た豊富な情報を有しており、それらの情報を医師や薬剤師などの医療従事者に提供することで、信頼関係を強固なものにすることができます。

こうした手法を用いることで、先発医薬品企業はジェネリック薬品企業に対して有利な状況で医薬品を販売することが可能となります。

マニュファクチュアリング・コスト・アドバンテージの詳細

医薬品の製造原価は一般的な製造業に比べて低いですが、医薬品の製造コストをさらに下げることにより、収益性を改善することができます。

医薬品の有効成分は有機合成により得られることが多いですが、そうした合成方法を改良し、収率を改善することは、製造コストの低下につながります。

また、工場を海外に移転することで製造コストを下げることができる可能性もありますし、医薬品の製造自体を他社に委託するという方法も選択肢の1つといえます。

プロダクト・インプルーブメントとプロダクト・ライン・エクステンションの詳細

プロダクト・インプルーブメントとは、医薬品の改良を行うことで医薬品の売上を伸ばす手法です。

別の記事でも述べましたが、改良医薬品を開発することで、ある有効成分を含有する製品群全体の製品価値を高めることができれば、製品群全体としての売上の増加につながります。

例えば、すでに自社が販売している医薬品の有効成分であったとしても、複数の有効成分を組み合わせることで、従来品より優れた効果を示す配合剤を開発することができれば、売上の増加を見込むことができるのです。

これに対し、プロダクト・ライン・エクステンションとは、いわゆる製品のラインナップを広げることで、同一の有効成分を含有する製品群の価値を高める手法です。

例として、胃潰瘍を効能・効果とする医薬品について、さらに研究開発を進め、十二指腸潰瘍を効能・効果とする同じ有効成分の医薬品についても薬事承認を取得するというような場合を挙げることができます。

この場合、対象となる患者が胃潰瘍の患者から、十二指腸潰瘍を対象とする患者にまで広がるので、市場の拡大が期待できます。

しかし、プロダクト・インプルーブメントとプロダクト・ライン・エクステンションは必ずしも明確に区別できるわけではありません。

例えば、従来は注射剤としてしか販売されていなかった医薬品を経口投与できるように開発して販売した場合、それはプロダクト・ライン・エクステンションであるともいえますし、経口投与の方が安全に服用できるため優れていると考えれば、プロダクト・インプルーブメントと解釈することもできます。

したがって、本書では、プロダクト・インプルーブメントとプロダクト・ライン・エクステンションのいずれを目的として得られた医薬品であっても、両者を区別することなく、「改良医薬品」と呼びます。

改良医薬品の開発と特許保護による医薬品ライフサイクルマネジメント

特許保護による医薬品

医薬品ライフサイクルマネジメントの目的は収益の最大化を図ることなので、医薬品ライフサイクルマネジメントの実施により、導入期から衰退期の全期間において売上を増大させることが先発医薬品企業にとって重要といえます。

そのため、先発医薬品企業は前節で述べた6つの手法を必要に応じて組み合わせて実施することで、導入期から衰退期において売上の増加を図っています。

しかし、医薬品産業においては、ジェネリック医薬品の上市が先発医薬品の売上の低下に大きな影響を与えるため、ジェネリック医薬品に対して適切な対抗手段を講じることが、収益の最大化を図るうえで非常に重要となります。

ブランディング、プロダクト・サポート、トレード・リレーションシップ、マニュファクチュアリング・コスト・アドバンテージは、利益を増やすためにいずれも効果的な手法ではありますが、ジェネリック医薬品の上市自体を阻止することはできません。

それに対し、改良医薬品の開発(プロダクト・インプルーブメント、プロダクト・ライン・エクステンション)と特許権による保護とを組み合わせれば、ジェネリック医薬品に対する強固な参入障壁を構築することが可能となります。

参入障壁を構築・強化すれば、ジェネリック医薬品の参入を遅らせるのみならず、ジェネリック医薬品が参入した後も先発医薬品の売上に与える影響を小さくすることができます。

そのため、改良医薬品の開発と特許保護を組み合わせた医薬品ライフサイクルマネジメントを実施することは、ジェネリック医薬品に対抗するために非常に重要といえるのです。

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原崎 (HARASAKI)
1985年生まれで医学・薬学・性・Webの知識を高める為に日々勉強。
自分の経験・知識で、悩みのある人を元気に、安心を与えられればと、その気持ちを原動力に医学を学んだ結果、婚期を逃し今に至ります。

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