医薬品には特許権による参入障壁もあります

 
医薬品の特許権
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原崎 (HARASAKI)
1985年生まれで医学・薬学・性・Webの知識を高める為に日々勉強。
自分の経験・知識で、悩みのある人を元気に、安心を与えられればと、その気持ちを原動力に医学を学んだ結果、婚期を逃し今に至ります。

視力:0.1
好きな眼鏡の色:黒
口癖:ちくしょうっ・・・

特許保護の重要性について解説

特許権とは排他的独占権であり、特許権者は業として3特許発明を実施する権利を占有することができます。

つまり、特許権を取得すれば、その特許権により保護されている発明は、その特許権者のみが実施できます。

もし、特許保護されている発明を他者が特許権者に無断で実施した場合、それは特許権侵害となります。

特許権者は特許権の侵害者に対して、その侵害行為をやめるよう請求することができますし、侵害行為により損害が生じた場合は、その損害の賠償を請求することもできます。

医薬品についてみれば、先発医薬品企業が新規な有効成分について特許権を取得した場合、その有効成分を含有する医薬品を製造したり、販売したりすることは、その先発医薬品企業しかできません。

ジェネリック医薬品企業が無断でその有効成分を含有する医薬品を販売することは、特許権の侵害に当たります。

先発医薬品企業は、ジェネリック医薬品企業がその有効成分を含有する医薬品を製造したり、販売したりすることをやめるよう請求することができますし、自社に損害が生じた場合は、損害賠償を請求することも可能です。

したがって、ジェネリック医薬品の参入を阻止するためには、特許権を取得して自社の医薬品を保護することが非常に重要といえます。

営利目的の一般的な事業における実施は、「業として」の実施に該当します。

しかし、「業として」の実施に該当するには、営利目的である必要はなく、営利事業ではない公共事業や学校における実施もこれに該当します。

他方、個人的あるいは家庭内での実施については、「業として」の実施には該当しません。

一刻を争う特許出願

発明の完成から特許権の消滅まで

発明の完成から特許権の消滅まで

特許権を取得するには、特許出願を行う必要があります。

ある発明を完成した場合、まずは特許出願の願書を特許庁に提出します。

願書には、明細書、特許請求の範囲などの書類を添付することが求められており、明細書には、その発明の名称やその発明の詳細な説明などを記載します。

特許請求の範囲とは、特許権の技術的範囲を定めるものです。

医薬品発明の完成
特許庁に特許出願
審査請求
審査官による審査
特許査定
出願から20年で権利消滅

特許権を取得するためには、特許庁の審査官による審査を受ける必要がありますが、特許出願を行っただけでは審査は始まりません。

審査を受けるためには、特許出願を行った後、さらに審査請求を行う必要があります。

審査により、その特許出願が所定の要件を満たしていることが認められると、特許査定となります。

特許査定となった後、特許料の納付を行うと、特許権の設定登録がなされ特許権が発生します。

特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了します。

通常、特許出願は薬事承認を取得する前に行われます。

特許権が存続している間にジェネリック医薬品の製造販売を行うことは特許権の侵害になるため、ジェネリック医薬品の製造販売は、特許権の存続期間が満了した後に開始されることになります。

特許権による医薬品の保護

特許庁の審査官による審査では、特許法に定められている要件について審査が行われます。

こうした要件の中に、新規性や進歩性と呼ばれる要件があります。

特許権を取得するための必要事項

特許権を取得するための主な要件
・特許法上の発明であること
・産業上の利用可能性があること
・新規制があること
・進歩性があること
・最先の出願であること
・明細書などの記載要件を満たしていること

新規性の要件があるため、出願時においてすでに公知になっている発明については特許権を取得することができません。

例えば、特許出願を行う前に学術雑誌に掲載されたり、ウェブサイトに掲載されたり、テレビや学会で公表された場合、その発明は出願時にすでに公知になっているため、特許権を取得することができません。

歩性の要件があるため、このような公知の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものについても特許権を取得することができません。

さらに、最先の出願(先願)であることという要件があるため、同じ発明について複数の特許出願があった場合、最も先に出願した出願人のみが特許権を取得することが可能であり、2番目以降に出願しても、特許権を取得することはできません。

先発医薬品企業は巨額の研究開発投資を行って研究を進めていますが、特許法で前述のような要件が定められているため、必ずしもその研究成果に関する特許権をとれるとは限りません。

例えば、先発医薬品企業が特許出願を行う前に、偶然同じテーマの研究していた大学の研究者がその研究成果を学術論文として公表した場合、新規性の要件を満たさなくなるため、その企業はその研究成果に関して特許権を取得することはできません。

もちろん、先発医薬品企業が研究を競う相手は、大学の研究者だけではありません。

ジェネリック医薬品企業が先発医薬品企業と競合して研究を行うことはあまり多くはありませんが、先発医薬品企業同士での研究開発競争は熾烈です。

同じテーマの研究開発を複数の先発医薬品企業が同時に実施することもあり、その場合、他社よりも特許出願がわずか1日でも遅れてしまえば、先願の要件を満たさないため特許権を取得することができなくなってしまうのです。

ジェネリック医薬品の参入阻止のために特許権を取得することが重要である点についてはすでに述べましたが、特許権を取得するため、先発医薬品企業は他の先発医薬品企業との競争を強いられることになります。

万が一、他社に先んじられてしまった場合、他社に特許権が付与されることで、それまでの研究開発が水泡に帰すこととなってしまうのです。

複数の特許権による強い保護

複数の特許権による強い保護

先発医薬品企業の研究開発は、新有効成分含有医薬品の薬事承認を取得したところで終わるわけではなく、さらに研究開発を進めることで、新効能医薬品、新剤形医薬品、新用量医薬品といった改良医薬品の薬事承認を取得することも少なくありません。

そうした一連の研究開発の過程においては、多くの研究成果が得られます。

例えば、研究開発において新たな有効成分が見出された場合、それはもちろん特許保護の対象となり得ます。

また、新たな効能を発見すれば、新効能医薬品の薬事承認を取得しつつ、その効能を特許権により保護することが可能となります。

さらに、ある有効成分に適した剤形を開発した場合は、新剤形医薬品の薬事承認を取得するとともに、その剤形を特許権により保護することもできます。

このように、先発医薬品企業は、1つの有効成分を含有する医薬品に関する一連の研究開発において、複数の特許権を取得することが見込まれるのです。

こうした複数の特許権による医薬品の保護が、医薬品ライフサイクルマネジメントにおいて重要な役割を果たします。

医薬品を保護する主な特許権

保護の対象(例)備考
物質特許医薬品の有効成分・医薬品の基本特許
・どのような効能・効果、用法・用量、剤形であったとしても、物質特許が保護する有効成分を含有する医薬品を製造すると特許権の侵害となる。
用途特許医薬品の用途
(効能・効果など)
・公知の化合物の新たな用途(効果・効能)も保護可能。
・ある化合物について用途特許が存在する場合、その化合物をその医薬用途に用いると特許の侵害となる。
製剤特許医薬品の製剤技術
(DDS技術など)
・製剤技術は有効成分が治療効果を発揮するために重要。
・汎用性の高いDDS技術を製剤特許で保護すれば、ジェネリック医薬品の参入に対して大きな抑止力となる。
製法特許医薬品の製造方法・製造方法のみならず、その製造方法により得られた物も保護可能。
配合剤特許有効成分の組合せ・公知の有効成分の単なる組合せでは進歩性の要件を満たさない事が多い。

物質特許の詳細

物質特許は、一般に医薬品を保護する基本特許と位置づけられるもので、医薬品に含まれる有効成分を保護することができる特許権です。

物質特許は、一般的に最も強い特許権と考えられています。ある有効成分を保護する物質特許を取得した場合、いかなる製造方法であったとしても、他社がその有効成分を製造したり、販売したりすることは特許権の侵害になります。

また、この場合、その有効成分を含有する医薬品を製造したり、販売したりすることは、その医薬品がどのような効能・効果、用法・用量、剤形などを有するものであったとしても特許権の侵害となります。

つまり、自社で実際に開発した医薬品が降圧剤であったとしても、その医薬品の有効成分を保護する物質特許を取得していれば、他社がその有効成分を含有する医薬品を製造すれば、それが仮に糖尿病や心不全の治療を目的とする医薬品であったとしても、特許権の侵害となるのです。

したがって、先発医薬品企業にとっては、有効成分を保護する物質特許を取得することが重要となります。

※中間体、水和物、塩、光学異性体、結晶形等も保護可能

また、有効成分は有機化学的な手法により合成されることが多いですが、そうした合成過程の途中において生じる化合物(中間体)を保護する物質特許も存在します。

さらには、有効成分が生体内で代謝されることで生じる化合物を保護する物質特許も存在します。

加えて、物質特許は、有効成分の水和物、塩、光学異性体、結晶形を保護することも可能です。

さらに、医薬品には有効成分以外に添加剤として多くの化合物が含まれています。

こうした添加剤は、それ自体が医薬品としての治療効果を備えているわけではありませんが、有効成分の保存性を向上させたり、体内における有効成分の吸収速度を調整したりすることで、有効成分の治療作用の発揮に重要な役割を担っています。

物質特許には有効成分を保護するものが多いですが、こうした添加剤を保護する物質特許も存在します。

このように、物質特許は強い権利であるだけでなく、1つの医薬品に関して、有効成分のみならず、中間体や添加剤など複数の物質特許を取得することも可能であることから、ジェネリック医薬品の参入を阻止するために最も重要な特許権ということができます。

用途特許の詳細

用途特許は、化学物質の用途を保護する特許権であり、医薬品の場合、主に効能・効果を保護するために取得されます。

ある有効成分が特定の疾患の治療に有効であることを見出した場合、たとえその有効成分がすでに知られたものであったとしても、その疾患の治療に用いるという用途を用途特許により保護することができます。

また、ある効能・効果を有することがすでに知られた有効成分について、新たな効能・効果を有することを見出した場合であっても、その新たな効能・効果に関して用途特許を取得することが可能です。

例えば、ある有効成分が血圧降下作用を有することが研究開発で明らかになった場合、降圧剤として用途特許により保護することができます。

そして、さらに研究を続けて、その有効成分が解熱作用をも備えていることが見出された場合、解熱剤という用途を、用途特許により保護することも可能となります。

1つの有効成分が複数の疾患の治療に効果を示すということは少なくないため、1つの有効成分に関して複数の用途特許が取得される例は多く存在します。

ある有効成分について降圧剤としての用途特許が存在した場合、その有効成分を含有する降圧剤を製造販売することは特許権の侵害となります。

しかし、同じ有効成分を含有する他の効能・効果の医薬品、例えば、抗炎症剤を製造販売しても、特許権の侵害にはなりません。

したがって、複数の医薬用途を発見した場合に、それらのすべての用途を保護するためには、個々の用途に対して用途特許を取得することが必要となります。

前述のとおり、物質特許は、その有効成分を含有する医薬品であれば、どのような効能・効果を有する医薬品に対しても効力が及びますので、この点において、用途特許は物質特許よりも保護が弱いといえます。

そうであるなら、物質特許を取得していれば、用途特許は取得する必要がないと考えることもできるかもしれません。

しかし、実際は、用途特許を適切に取得することは、医薬品ライフサイクルマネジメントとして非常に効果的です。

製剤特許の詳細

製剤特許は、医薬品の製剤技術を保護する特許権のことです。

製剤とは、適切な治療効果を発揮させるため、あるいは、その医薬品を投与しやすくするためなどの目的に応じて、有効成分に添加剤を加えて適当な形に製したものを意味しています。

そうした製剤の形が剤形であり、錠剤、カプセル剤、注射剤などがこれに該当します。

医薬品において、製剤は非常に重要です。同じ有効成分を有する医薬品であっても、製剤が異なれば、治療効果が十分に発揮されないということがあるからです。

有効成分が体内で適切な治療効果を発揮するためには、例えば血液中での有効成分濃度が一定の範囲内にある必要があります。

その範囲を超えてしまうと、仮に治療効果を発揮したとしても、副作用が発生する可能性が高くなります。

逆に、その範囲を下回ってしまうと、治療効果が十分に発揮されません。

また、製剤が適切でなければ、有効成分が不安定になり、すぐに分解してしまうということにもなりかねません。

こうした事態を避けるため、医薬品においては、有効成分の体内濃度が適切なものになるよう、そして、有効成分が医薬品の中で安定して存在できるよう、さまざまな添加剤を加えているのです。

新規な化合物からなる添加剤であれば物質特許として保護することが可能ですが、すでに知られた添加剤であっても、特定の有効成分と組み合わせることで著しい安定性の向上をもたらすような場合、製剤特許として保護することが可能です。

鎮痛薬(有効成分A)
鎮痛薬(有効成分A) +添加剤X添加剤Xを用いる製剤技術について製剤特許を取得可能

しかし、通常、よく知られた添加剤を添加するだけでは、血中の有効成分濃度をある程度コントロールすることはできても、患部を狙ってその有効成分を届けることはできません。

例えば、抗がん薬を投与したとしても、その有効成分は全身に拡散するため、がんが存在する部位にも、がんとはまったく無関係な健康な部位にも有効成分が作用してしまうおそれがあります。

これは、がんに対する有効成分の作用を弱めるのみならず、副作用を生じる原因にもなります。

こうした問題を回避するために、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)という技術が用いられています。

DDSの目的は、有効成分を必要な場所に、必要なタイミングで、必要な量だけ届けることです。

それを達成するための技術として、現在では大きく分けて3種類の技術が知られています。

1つ目は、標的指向型DDSと呼ばれるもので、有効成分を必要な場所に届けることを主な目的としています。

例えば、抗がん作用を有する有効成分をがん細胞にだけ作用させるような技術です。

2つ目は放出制御型DDSで、これは必要なタイミングで必要な量だけ有効成分を届けることを主な目的とするもので、徐放性製剤をその一例として挙げることができます。

徐放性製剤とは、有効成分が溶け出す速度を遅くした製剤のことであり、この製剤を利用すると、例えばそれまで1日3回の投与が必要であった医薬品が、1日1回の投与で十分な作用を発揮するというような効果が期待できるのです。

3つ目は、吸収制御型DDSです。

有効成分を皮膚から吸収させて作用を発揮させることは困難なことが多いのですが、この技術を活用することで、有効成分を皮膚から体内に吸収させ適切な治療効果を発揮させることが可能となるのです。

こうしたDDS技術は、製剤特許として保護することが可能です。

また、DDS技術の中には、特定の有効成分に限定されるものではなく、種々の有効成分に対しても適用可能な技術が存在します。

そうした汎用性の高いDDS技術を製剤特許で保護すれば、ジェネリック医薬品の参入に対して大きな抑止力となります。

DDS技術は、1980年代にはすでに実用化されており、新しいコンセプトの技術というわけではありません。

しかし、近年、その技術的な改良が進んでおり、ジェネリック医薬品への対抗戦略という観点でも注目されています。

製法特許の詳細

製法特許は、医薬品の製造方法を保護する特許権のことです。

有効成分は多くの場合、有機合成により製造されていますが、その合成手順や、反応時間、反応温度などの諸条件が異なれば、得られる化合物の収率は大きく変化します。

また、特定の化学構造(立体異性体など)の中には、ある特定の合成経路を経なければ、合成するのが困難であったり、非常に手間がかかったりするものもあります。

そのため、自社が製造販売する医薬品や有効成分について、それを効率よく製造できる方法を製法特許により保護しておくことには、大きな意義があります。

また製法特許は、製造方法のみならず、その製造方法により得られた物を保護することができます。

例えば、ある有効成分の製造方法について製法特許を取得しておけば、他社が製法特許で保護された製造方法によりその有効成分を製造した場合は、もちろん特許権の侵害となりますが、その製造方法により製造された有効成分を用いて医薬品を製造したり、販売したりすることも特許権の侵害となるのです。

配合剤特許の詳細

1つの錠剤やカプセル剤などの中に複数の種類の有効成分を含有する医薬品のことを配合剤といいます。

配合剤においては、有効成分同士の相乗効果により、高い治療効果を発揮することが期待できます。

そうした配合剤における有効成分の特定の組み合わせを保護する特許権が配合剤特許です。

通常、新規な有効成分であれば、それ単独で物質特許が取得されることになりますので、配合剤特許は、すでに知られた有効成分の組み合わせを保護することがほとんどです。

鎮痛薬
(有効成分A)
鎮痛薬
(有効成分B)
鎮痛薬
(有効成分A+B)

予期せぬ相乗効果
有効成分AとBの組合せについて配合剤特許を取得可能

しかし、単に公知の有効成分を組み合わせただけの配合剤では、たとえそれが実際に販売されているものであったとしても、進歩性の要件を満たさないことが多く、特許権を取得することは困難となります。

しかし、複数の有効成分を組み合わせることで、個々の有効成分からは予測できないような効果を発揮することがあり、そのような場合は、配合剤特許による保護を受けることができる可能性が高くなります。

配合剤を開発する主要な目的は、より効果の高い医薬品を作り出すことであると考えられますが、配合剤の開発はジェネリック医薬品への対抗戦略としても、重要な意味を持っています。

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